2022-01-01から1年間の記事一覧
10月9日晴れた空、冷たく光る朝。気圏は日本の花巻の宿。少しの本とノートとペンと。それさえあればよい。秋の合図に手のひらから零れる、雫。いつかどこかで失ったはずの祈りに笑って語り掛ける、カフェオレ。 朝から夕、夕から夜へ。傾き沈む日射し。そこ…
軽石をつまみ上げた 黒と赤にわかれていた 誰かが色付けしたのだろう ―夜と夕やけみたい― と姪がつぶやいた夜ごと そのつぶやきが 軽石の鮮やかな色と 連れ立って 寝入りばなの夢に あらわれたある日 ひとりで 朝の色を探しに出かけた 姪と一緒に探しに出た…
迷いながら風をうけていた 草の根に花と茎の息吹だ 写真は土くれの底を 写し撮ることができないすべてを持ち帰ることもできない 瓶に詰めることも 食むこともできない そうではあるけれども ときおり貴方にそれをねだったりする困った顔の貴方は 私にねだる…
繰り返す きみを愛しはじめたぼくを またずっと繰り返す きみがこの町に 訪うべき日々を約束して 「君の町」 山田彩緒君の町から離れると しばらくトンネルがつづく 点々と過ぎるライトに 君の横顔を見る 瞬間 君が笑ったことや 泣いたこと おどけたこと 怒…
『雪爆ぜ』 山田真佐明 白と鼠の世界であなたの吐息を吸い込む くちづけの味はすこし塩辛かった 氷の世界でゆっくりあなたの裸を撫でさする あたたかな陽ざし 柔らかな肉体の 白い部分やつき出た盛り上がりがかげと香りをまとい私を容赦なく襲うようだ 知っ…
『新婚道中』 山田彩緒 それは青とも緑ともつかないあなたが紛れ込んだ日々 外の顔を想うのです私の知らないあなたはきっとむつかしいお顔をしてただいまの前に何か買い物をなさるのでしょうわたしへのおみやげはその行為そのものであって奥ゆかしくも愛しい…
もういい、もういい、訪い告げる影に音、一番星(山田彩緒) 『美しき季節』 (山田真佐明) くらくらする夏がすぐの平穏な日将棋を指していると周囲が慌ただしい 具合悪そうに運ばれたあなたは痛々しくあった 相手をうながして場所を変えた太陽が山や海を熱…