詩ノオトより4篇(改)

10月9日
晴れた空、冷たく光る朝。気圏は日本の花巻の宿。
少しの本とノートとペンと。それさえあればよい。
秋の合図に手のひらから零れる、雫。
いつかどこかで失ったはずの祈りに
笑って語り掛ける、カフェオレ。

朝から夕、夕から夜へ。傾き沈む日射し。
そこに初恋の光でも射せば、黄昏る。

熟れた乳房に顔埋める。
生きていると確かめあった。
囁きが耳元を掠めて、あたたかな空気が包む。

10月29日
秋雨が部屋の窓をうつ。
喜びと同じ重さで焦りがあって
そのどちらもが今日の小雨の色で
心の襞に何か打ちつける。
考えず、感じず。そんなのは無理なことだ。

                  山田真佐明