傘 / 詩ノオト

 傘  /  山田 彩緒

  

むらさきいろの

あなあきがさ

たっつんたっつん

ほほぬらす

どこぞへわすれた

こともなく

あめんひいっしょに

でかけたもんだ

ついぞあなぽこ

おおきくなって

そんでもふりふり

つれていく

むらさきのかさ

おらのすきないろ

おぼえてらったなは

おとうとがてれて

よこしてから

なんねんだろう

ばけがさになってけねか

むらさきいろのかさ

 

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 詩ノオト 夏から冬 / 山田真佐明

 

朝方、紅い横顔の頬をすべり落ちる汗。透明な悲しみ。峠の向うから圧し殺した声で、列をつくってやって来る。闇が朝を通り過ぎる声として。闇と光が混じり合って汗を蒸発する。

 

両手に持ちきれない疲労と感情。白いレースカーテンの向こう側にほほ笑む入道雲の切れ端。さ迷って歩き続けてきた過去。アルコールに酔いやすい身体。ペンとノートがあれば、清らかな明日へと帰ることができる。

 

汚い ありのまま

綺麗な 虚飾

 

言ってしまえば草原に恋する私の負けだ。

 

ため息が霧になる夜半だからって

恋は光の速さにはなれない。

 

遠くの岸壁から、夕は5時の汽笛。気圧は低く、寒気の気配に青い空は光を失う。冬と秋が同居した、夏を忘れた春のような。