みぞれの朝

みぞれの朝 食堂に蛍光灯がともる
ラジオ体操後 テレビがつけられる
各々 意中の座席に腰かける
お前の定位置まえに 座る
まだ来ないが テレビを観ながら待つ 

時折窓の外をみる みぞれに混じる雪片が
揺らめきながら 一直線に落ちてゆく 

 

昨夜はずっと話しをしていた
ほとんど お前の思い出話だった 笑い合った

冬がすぐそこに来ているが 暖かであった
お前は寒そうにしていたから
上衣を貸した 落ち着いて話すようになった

 

誰かが少し窓を開けた
鋭く刺すような冷たい風が入る

 

もう二十分もすると朝食の時刻だ
また昨日のよう お前と話しがしたい
まぶたを閉じて 横顔を思う
あどけなさの残る お前
その強い態度との危うい均衡に 恋をしたのだ

 ―おはようございます―
眠そうに少し腫れた顔で席に着く
ぼうっとしてから
昨夜話し過ぎたことを謝った
首を横に振って 大丈夫だ というと

 ―昨日の夜は久しぶりに安心してよく眠れました―

とまっすぐに微笑んだ
細い体の ありったけの力を使うように

 

みぞれは朝を満たし続けている
雪片が 揺らめきながら 一直線に落ちていく